Arboreta合同会社代表の黒田が神戸市副市長就任のため、2024年1月より個別のコンサルおよび収益事業を停止しています。
MORI TAGシステムは、当面無料でID登録していただけます。
国産広葉樹活用プロジェクトから名称を「ネットワーク」に変更しました
第1回分科会で解説&検討したことを報告します。
国産広葉樹活用ネットワーク
広葉樹活用プロジェクト分科会資料
2023年11月10日
分科会1)
里山広葉樹の売買に関わる解説
分科会2)
森林の学術調査、公園・街路樹管理、
その他の分野
分科会1)里山広葉樹の売買に関わる解説
資源利用までの段取り(概要)・・・長野県などの実例から
以下の作業は、里山広葉樹の利用スタート時には必須。軌道に乗ったら、地域により改変も可能。
森林調査の必要性
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森林調査の目的は資源利用だけではない。山林の状態を「なんとなく見る」のではなく「データとして記録する」ことで、抑制できる問題がある
里山の荒廃、ナラ枯れの発生から激害への過程、野生動物の移動拡大
防災上のリスクの把握
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森林管理という視点で、ナラ枯れについて認識してください。「枯れていない」場合でも、すでに被害が増えていることが多い。
木材の供給側
理解していただきたいこと
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どんな木でも材として売れるのではない。だから売れそうなところを探す。
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用材としての必要条件を満たすことが前提なので「在庫情報」が必要
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木材以外に工芸的な利用がある。カエデの若木、蔓植物、サクラ・シラカバなどの外樹皮(樺細工)
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用材利用が困難でも里山管理は必要であり、ほだ木やチップ、燃料などの用途に向ける。
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行政の主導が大変重要
手順
1.場所の選択:田畑や道のそば、平坦地、太い広葉樹、樹種構成、ナラ枯れの被害度
→良質材があり、搬出コストのかからない、収益の見込める場所を選ぶ
2.資源量の調査と把握、樹種、推定材積、材質概要・・・MORI TAGアプリ
→1.2.に行政がサポート。森林環境譲与税をどう使うか。府県や市町の補助金
調査に研究機関が協力できると、段取りが速く進む
3.伐採の手順(担当者)、搬出までの業者とコストの算定
4.製材所までの距離、製材所の熟練度(広葉樹を挽けるか)→研修などの対応
5.購入者とのマッチング。
用材以外の部分の用途まで決める(カスケード利用)
ほだ木・チップとしての購入者も見つける必要あり
6.丸太としての「仮の価格決め」
→高騰しているので国内流通の相場と輸入材の価格を把握しておく。
ただし、低質材は同等価格は無理。
7.納入方法の協議・・・丸太で運搬か、製材してから納入か、直径何cmまで買い取るかetc.
伐採の実施
1.必ず冬期に伐採する。ナラが多い林は、(ナラ枯れ被害無しでも)絶対に春夏は伐採しない。
2.伐採したらすぐに搬出・製材。野外で放置しない。
→残材を春以降に林内に放置するとナラ枯れ促進。残材利用を計画に含める
3.樹木情報(番号のみ)を丸太木口に書き写して、トレーサビリティを継承させる
4.製材板にも樹木情報を書く(通し番号などで元台帳と紐付け)
5.製材後の材積と歩留まりの計算・・・これを必ず実施。次回以降のデータとして重要
6.価格の最終合意。良質材はパルプ並み価格では売らない。
7.納品 →結果を報告してください。情報の共有が重要
木材の購入側
事前に理解していただきたいこと
● 広葉樹材の流通はこのままでは増加しない。里山のナラ類その他の活用と、次世代林の育成が必要。良いものだけを伐採する「収奪林業」はやめる。
→大径材のみを要求しない。自社だけという抜け駆けを控えて欲しい。
パルプ用丸太から「良いモノを抜き取って高く売る」慣習を業界にやめさせる
● 所有者の収益を前提とした取引にする・・・伐採後に放置すると、次世代の森林再生に失敗する。良質の広葉樹材を得られなくなる
● 「材のピンホールは不可」「変色とシミは不可」という利用基準の見直しをお願いしたい。ナラ枯れ被害材でもナラ類心材は穿入なし。軽微な変色は「腐れ」ではない。
● トレーサビリティ情報まで活用して欲しい。
木材供給者とのマッチング
購入者はMORI TAGのスマホアプリは使わない。
データ閲覧は、当面はダウンロードデータ(Excel)で提供する。
森林情報は所有者の資産であるため、受け渡しに注意します。
公開できる森林情報が増えてきたら、閲覧用のID登録を実施する。
1.必要な樹種、太さ、材積、ナラ枯れ被害の許容度・・・無い物ねだりをしないでほしい
2.年間の必要量・・・一カ所で必要量に対応できない場合は複数箇所
3.材質の条件・・・データ(写真つき)を見てから現地視察
4.丸太としての「概算価格」の設定。パルプ並みではなく妥当な価格。買いたたかない
・・・コーディネータの介在が望ましい
5.板に挽いたものを買う場合に、挽き方の指示などどこまでか
6.乾燥場所の確保または人工乾燥・・・乾燥してから納入は困難な場合が多い
7.森林所有側との合意・・・欠点が多かった場合の対応など
→ここに第三者が入るべき。行政またはコーディネータ
8.材のトレーサビリティを有効に活用する。顧客への森林情報の提供など。
継続的な事業展開へ
● 資源利用の取り組みは、地域でまとめて進めてください。森林所有者から個別にご相談では対応困難。まず地方行政でとりまとめを。
● マッチングができた会社に対して、継続的な購入を直接交渉しない(原則)。
流通が順調に展開できるまでは、「自分だけ」をやめて欲しい。
● 森林調査は必ず事前に実施する。全面積でなくても代表的な部分でも良いが、森林の在庫データが無いと所有者に有利な販売ができない。次世代育成ができない。
無償セミナーと有償アドバイスについて
● 当面は無償セミナーを実施しますが、ボランティアでは活動は持続できない。
● 指導は有償という意識を持ってほしい。資源利用を軌道に乗せるには「森林・木材アドバイザー」などプロの仕事が不可欠で、それは無償ではできない。
● この取り組みでは、行政や企業等からの相談に無料で対応してきた。1〜2時間のアドバイスで「何か」が新たに実施できるわけではなく、継続的な相談と検討が必要。「有償で依頼して結果を出す」方向への切り替えをご検討ください。
MORI TAGアプリの活用について
● データの収集・管理にコストがかかる。MORI TAGアプリの開発にはすでに700万円かかっている。年間のサーバー管理費用は100万円。利用者の負担がないと、データ管理は継続できない。毎年コストが発生するので、アプリは販売せず会費制(供給側)と売買成立への課金(購入側)にしたい。
● MORI TAGシステムは、無償の試用期間を来年度半ばまで延長する。森林管理を統括する行政の担当部署と、収益を得る企業には負担をお願いしたい。
● 自治体ごとの樹木管理システムでは、資源利用で相互閲覧できない。
次世代林の再生:資源利用のための伐採後
● 電子タグ、ナンバーテープをつけた切り株は、夏以降に萌芽の状況を追跡調査する。1年で50cm以上伸長し、3〜4年後にはかなり旺盛に成長している。
● ナラ類ばかりの森では、数十年後にまたナラ枯れが起こるので、樹種の偏りは無くす方向が良い。材質の良い林は、広葉樹林業に力を入れるべき。
● 萌芽更新だけではなく、実生をしっかり更新させる。ポット苗の植栽は根の成長が良くないので、あまり推奨できない。
● 伐採後には、いきなりポット苗を植栽しない。
参考情報
「ナラ枯れ被害を防ぐ里山管理」
現代農業 11月号、12月号
その他・・・メルマガで紹介します。
質疑応答:営業関連の話も含まれるため、分科会参加者のみに提供しています。
広葉樹活用プロジェクト分科会資料
2023年11月10日
分科会1)
里山広葉樹の売買に関わる解説
分科会2)
森林の学術調査、公園・街路樹管理、
その他の分野
分科会2)森林の学術調査、公園・街路樹管理、その他の分野
森林の学術調査:CO2吸収源とナラ枯れの観点を含めて
i)従来の森林調査の特徴と課題
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教員の退職で調査データが廃棄される。他人のとったデータは読み取れない
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電子野帳もあるが、個人レベルの保存では相互参照が難しい。
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同じ林分でいくつもの大学が毎木調査・・・屋久島など。MORI TAGシステムではクラウドサーバ保存でデータ共有が可能。効率的で協力的な研究取り組みに進んで欲しい。
ii) デジタル化からデータ共有へ
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毎木調査の野帳記録(電子野帳)で完了ではなくサーバ保存へ
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調査データを捨てなくてすむサーバ保存
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蓄積データをBIgDataにする価値
iii) 完全自動化を期待する前にできること
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樹木の自動計測はかなり進んだが、樹種の自動判別まではまだ年数がかかる。
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「目で見ること」の重要性を無視した完全自動化は進歩ではなくむしろ退化。
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レーザー測量では点群データ。そこから「樹木情報」を読み取るのは別の技術。
iv) デジタルデータ保存で何が進むか
CO2吸収機能について
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現在のCO2吸収源の評価は人工林のみ。理由は、「成長曲線がわかっているから」。一方、広葉樹は「成長過程が様々、データが無い」と言う理由で、林野庁は吸収源として認めていない(Jクレジット)。
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壮齢以上の広葉樹はCO2吸収ゼロとする自治体が多い。
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広葉樹林(大半は二次林)は日本の森林の半分以上。多様な樹種や樹齢を無視して吸収をゼロとするのは理屈に合わない。そのことは林野庁も理解はしているが、「データが無い」を根拠に、変更する方向に進まない。
データをとると・・・
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各地で、樹種ごとの成長曲線が得られる。
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肥大成長量の計測
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伐採後の切株で、年輪幅測定→こちらの貢献が大きい
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伐採後の萌芽更新を「管理」と認めて、CO2吸収の算定に向かえる
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今は「広葉樹林の伐採=CO2排出」となっている。たとえば備長炭生産地ではその扱いに納得されていない。
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庭園(街路)樹木のデジタル管理
現状
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紙ベースの樹木調査、台帳保存が大半。人件費と長期保存の観点でデジタル記録を推奨したい。
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自治体ごとに記録システムを自作または別会社に発注なので、データ共有が困難。
行政職員以外は自由に使えない。
必要な項目がない、あるいは項目が多すぎる(樹木のプロが設計していない)
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樹木データの記録が残っていない。あるいは紙ベースなので、共有されていない。契約年度ごとに会社が異なるので、報告所のデータしかない。
→街路樹伐採のあとに、同じ樹種を無条件に植栽するなど、改善できない。
樹木管理のためにMORI TAGの利用
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現在の学術モードを利用可能。
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街路樹調査の利用者がある程度まとまれば、あらたに「街路樹調査モード」を作る。費用負担がないとアプリの機能追加は困難。
→樹種名選択肢の追加、多年度の継続調査に対応
枯れ枝や腐朽などの記録項目の追加。
トラスト財団等
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資源利用が目的ではないが、管理上、樹木を記録する
→学術的な調査と同じ方法で記録。
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ただし、ナラ枯れの発生や老齢林の荒廃があり、目標を定めた管理(伐採や更新)は必要。関東の狭山丘陵などのナラ枯れ激害化から、「温存」は無理なことを理解してほしい。
森林研究・管理以外の業種・目的
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金融・投資関係
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環境関連コンサル
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建築
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アパレル
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その他
MORI TAGシステムの使用方法について
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入力・アップロード後にはブラウザで閲覧する →https://www.arboreta.co.jp/moritag
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PCやタブレット以外に、スマホを横向けても閲覧可能。
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アップロード作業後には、ブラウザ閲覧でサーバへの記録を確認してください。
課金について
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開発コストがかかっている。今後も改善が必要。クラウドサーバ管理費用 100万円/年
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樹木管理については登録本数に応じた年会費。試用の段階で相談します。
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研究者の試用では、当面は利用料無料 →できるだけたくさん使って欲しい